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月刊広報誌 熊本羅針
各界からの提言のページです。
中小企業の将来と街づくり
- 熊本学園大学 商学部教授 香川 正俊 -

企業間格差が拡大する中での企業経営
我が国は末曽有の経済危機の渦中にありますが、景気回復の鍵を握るのは日本経済の土台である中小企業の頑張りであり、地域に根ざした企業活力の発揮にあります。そのためには他力本願ではなく、地域の活性化を通した中小企業家の自主的努力が求められると思います。小回りのきく中小企業は「すきま産業」への参入や、優れた技術力を活かした消費者ニーズに見合う新製品開発への挑戦、地域の要請にかなう地産地消及び地場産業の育成に活路を見いだすことが重要です。
熊本県下でも多くの中小企業が倒産する一方、幾多の商店街が疲弊しております。しかし全国各地で住民と行政及び各種団体が一体となった元気な街づくりが行われており、中小企業団体は牽引車の一つになっています。中小企業の将来と街づくりは密接不可分の関係にあるのです。
2011年春には九州新幹線・鹿児島ルートが全線開業しまう。熊本に及ぼす経済効果に関しては楽観論と悲観論がありますが、福岡への「ストロー効果」を懸念する前に関西・中国圏を含む観光客誘致の努力を強めなければなりません。私は、いわゆる「福岡ブランド」に対抗するため、熊本市においては、商店街の道路からマイカー等の自動車交通を原則として排除し、歩行者専用空間を中心とする街路空間に買い物、休息、イベントが行える空間(mall=買い物公園)をつくり、路線を定めた公共交通機関のみの通行(transit=通過交通の排除)を組み合わせたトランジットモールの導入を提案しています。トランジットモールは商店街を活性化させますが、同時に中小企業が創る各種製品の日常的な展示・即売も可能になります。さらに都心部全域に導入すれば交通渋滞の解消、公共交通の再生、環境改善及び当該区域の快適な生活環境整備につながり、福岡市等との差別化が可能になる訳です。魅力的な街づくりは住民アメニティの向上を通して誘客に多大な効能をもたらせ、新幹線開業に伴う最も実効性のある集客資源になり得ると思われるのです。中小企業はそのような街づくりの一主体になる必要があると考えます。また、八代市では新幹線と九州縦貫自動車道及び八代港を有機的に関連させた産業基盤と街づくり、天草等では宿泊観光客の拡大、水俣市では環境関連の産業育成が重要課題になるでしょう。
もう一つの提案は新製品の開発と共に、歴史的建造物等や人々を魅了する地場製品の保存・育成です。このような建造物や製品は荒尾市や山鹿・鹿本、菊池市等、熊本県の各地に存在しますが、取り壊されたり技術の継承が困難な状況に置かれています。けれども近年、観光客をはじめ多くの人々が、住民が住みよい地区、そこでしか触れられない地域に集う傾向が見受けられます。例えば沖縄観光を見ても、定番の観光地から「沖縄らしい」地域に人気が移ってきています。中小企業家は今後、住民・行政及び各団体と協力して歴史的建造物等を保存すると共に、熟練工の技巧に若者の斬新なアイデアを加え、地場製品に一層の付加価値を付けて観光客や地元消費者に提供し、インターネット等による販売促進に取り組む必要があると考えます。但し、これ等の取り組みは企業単独より業界が協同して行う方が効果を期待できるということに留意する必要があります。
これからの中小企業家には自主・自立の精神を前提に、新手法による街づくりを通して明るい将来を展望できる態勢の模索が不可欠だと思われるのです。